近視治療(オルソケラトロジー・低濃度アトロピン点眼・多焦点ソフトコンタクトレンズ)
近視は眼軸長が長いことや、角膜や水晶体の屈折力が強いことで、網膜よりも前方に焦点が合ってしまい、遠方の物を見ようとするとぼやけて見えるという状態です。
近年、子供の近視が増加しています。子供の近視の多くは、主に眼球が楕円形に伸びる(眼軸長が伸びる)ことが原因であり、一度伸びてしまった眼軸長は元に戻ることはありません。近視が進んで病的近視という状態になると、将来的に黄斑変性症や網膜剥離、緑内障などの様々な合併症が生じ、ひどくなると失明する可能性があります。
現在、子供の近視進行抑制のため世界中で様々な研究が進められており、有効性や安全性が徐々に示されてきている治療法があります。
その中で、当院では「オルソケラトロジー」と「低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ点眼薬)」「多焦点ソフトコンタクトレンズ」を取り扱っています。
※低濃度アトロピン点眼はマイオピンの取り扱いを在庫分で終了し、リジュセアミニに変更になります。
オルソケラトロジー:近視の矯正・進行抑制
オルソケラトロジーとは
「オルソケラトロジー」とは、近視・近視性乱視の方のための、手術のいらない視力矯正治療法です。
アメリカやヨーロッパ、アジア諸国を中心に、世界各国で安全性・有効性が認められ、治療が行われています。
日本国内でも2009年に厚生労働省の承認を受け広まってきました。2017年にはガイドラインが更新され20歳未満の子供への処方が適応となりました。
オルソケラトロジーの仕組み
「オルソケラトロジーレンズ」という特殊な形状が施された、高酸素透過性の専用ハードコンタクトレンズを夜寝る前につけて、朝起きたらはずします。
就寝中にレンズが角膜の形を正しく変化させ、裸眼視力を矯正するのが特徴です。それにより翌朝レンズをはずした後も、角膜の形状が矯正された状態を一定時間維持できるため、日中裸眼で生活できるようになります。

オルソケラトロジーの特徴
メリット
- 日中裸眼で過ごせる(活動時にコンタクトレンズや眼鏡を装着しないため、激しいスポーツや水中スポーツなどでも安心)
- 外科的手術は不要で、治療をやめれば徐々に元の角膜の状態に戻せる
- 子どもの近視に対し、進行抑制効果が期待できる
※未成年者への処方は医師の判断による。また、保護者の同意が必要
デメリット
- 毎日、コンタクトレンズの手入れが必要
- 強度近視や乱視、遠視は矯正できない
- 毎晩、継続してレンズを装用しなくてはならない
- まぶしさを感じたり、光がにじんで見える可能性がある
オルソケラトロジーに向いている人
- 軽度~中等度までの近視の方
(近視度数はー4.00Dまで,乱視度数はー1.50D以下) - メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放されたい方
- レーシックなどの屈折矯正手術に抵抗のある方
- 日中点眼薬を使用する方
オルソケラトロジーに向いていない人
- 夜勤などで一定の睡眠時間がとれない方
- 医師が装用に不適と判断した眼の状態がある方
(重度のドライアイ、炎症、感染、アレルギーなどがある方) - 妊娠中・授乳中、または妊娠の計画がある方
- レンズを適切に使用できない方
- 定期検査に通えない方
治療の流れと費用
1. 予約日の調整
オルソケラトロジーの検査・説明などのための日程を予約します。
2. 適応検査
オルソケラトロジーが可能かどうか専用の検査を行います。
●適応検査 5,500円(税込)(両眼・片眼共通)
3. お試し装用
テストレンズの貸出装用を1~2週間行います。
視力矯正の程度やレンズ装用に伴う目のトラブル有無、レンズ装脱やお手入れの確認を行います。
●お試し装用 27,500円(税込)(お試し装用費用・ケア用品代+検査料)(両眼・片眼共通)
4. 治療契約
お試し装用でご納得いただき治療継続を希望される場合、本治療の契約を行います。
治療用レンズのお渡し月からの開始で、定額制(定期検査料込)になります。
【初月:眼科にて支払】両眼 8,800円(税込)、片眼 5,500円(税込)
【2か月目以降:クレジット決済】両眼 8,800円(税込)、片眼 5,500円(税込)
5. 定期検査
装用開始1か月後→装用開始3か月後→以後3か月毎の受診となります。
両眼 | 片眼 | |
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初年度治療合計額 | 105,600円(税込) | 66,000円(税込) |
交換保証 | 片眼につき毎年2回 | |
紛失保証(1枚) | 16,500円(税込) | |
2年目以降の年間支払額 | 105,600円(税込) | 66,000円(税込) |
※レンズ洗浄液などのケア用品は別途購入が必要です。
オルソケラトロジーに関するQ&A
レンズの寿命はどれくらいですか?
レンズの寿命は通常の高酸素透過性ハードコンタクトレンズと同じくらいで、2~3年程度で交換が必要になります。定期検診をきちんと受け、医師やスタッフにレンズの状態を確認してもらい適切に使用するようにしましょう。
レンズの装用方法は教えていただけますか?
オルソケラトロジーレンズの装用方法につきましては、眼科施設での指導がありますので、ご安心してご使用いただけます。取り扱いは一般的なハードコンタクトレンズとほぼ同じで、やり方さえ覚えれば、どなたさまでも簡単にお使いいただけます。
レンズケアはどのようにするのでしょうか?
一般的なハードコンタクトレンズと同様に、日常のケアを行います。レンズを外したあとに洗浄してから保存します。ケアを行わないと汚れの蓄積等により合併症を引き起こす可能性がありますので、医師の指導のもと十分なケアを行ってください。
いろいろなケア用品があるけど、どれを使っても良いのでしょうか?
ケア用品は患者さまによって異なりますので、指定のものをご利用ください。詳しくは医師やスタッフにお問い合わせください。
オルソケラトロジーによる合併症のリスクはありますか?
使い方を守らなかったり、レンズケアを怠ると、通常のコンタクトレンズと同じトラブルが起こる可能性があります。トラブルを未然に防ぐためにも、レンズケアを徹底し、必ず定期検査を受けましょう。目に違和感がある場合は、装用を止めて、医師の指導を受けてください。
装用中に目をこするとどうなりますか?
強く目をこすった場合、まれにレンズがずれることがあります。レンズがずれたまま長時間を経過すると、翌日の見え方に影響する可能性がありますので、目をこすらないように気を付けてください。
遠視や乱視でもオルソケラトロジーはできますか?
オルソケラトロジーは近視矯正治療であり、遠視を矯正することはできません。軽度の乱視は近視に置き換えて矯正することは可能です。
注意事項
- 当院ではオルソケラトロジー用レンズとして「ブレスオーコレクト®」(シード)を取り扱っています。
- 契約は、治療用レンズの初回お渡し日が契約日となり、契約月分から月額治療費が発生します。初回お渡し日を翌月以降に変更された場合でも、月額治療費は当初のお渡し日での月額利用料からかかります。その場合、お渡し日の当月分までの利用料は、すべて眼科でのお支払いとなります。
- ご契約日から1か月間は注文のキャンセルが可能ですが、それ以降は契約から1年間は解約できません。
- 本治療をキャンセル・解約した場合はレンズを返却して頂きます。
- 月の途中の利用開始や解約でも日割り計算はせず、1か月分のご請求となります。
- 未成年者の場合、その保護者が申込者となるものとします。
- 2か月目以降の治療費は、収納代行委託先である(株)シードよりクレジットカード決済がされます。
- オルソケラトロジーの治療中に目のけがや病気が生じた場合、別途治療費や薬代が必要になります。
- オルソケラトロジーは自由診療(保険対象外)です。治療費は医療控除の対象となります。領収書などは大切に保管してください。再発行はできません。
多焦点ソフトコンタクトレンズ:近視の矯正・進行抑制


多焦点ソフトコンタクトレンズは、一般的に遠近両用コンタクトレンズとして知られています。その中でも焦点深度拡張型はEDOF(Extended Depth of Focus)と呼ばれ、遠方~中間~近方まで連続して焦点が合うように設計されています。これにより近視矯正だけでなく、眼軸長の伸長を抑制することで近視の進行も抑制すると考えられており、その有効性はオルソケラトロジーに匹敵すると示されはじめています。
メリット
- 1日使い捨てコンタクトレンズのため、レンズ洗浄の手間や費用がかからない。
- オルソケラトロジーでは非適応となる強度近視にも対応が可能。
デメリット
- 日中に装用するため、ゴミが入ったときに自分でレンズを取り外すなどの自己管理が必要です。そのため、当院では小学校高学年からを対象とさせていただいております。
- 管理が不適切な場合、通常のコンタクトレンズと同様に、感染症やアレルギーなどの合併症のリスクがあります。
費用
コンタクトレンズ代(シード 1dayPure EDOF:1箱32枚入り) ※診察代(保険診療)が別途必要です |
3,550円(税込) |
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低濃度アトロピン点眼:近視の進行抑制
低濃度アトロピン点眼薬「リジュセアミニ0.025%」とは
小児期の近視の進行を軽減させることを目的に低濃度のアトロピンを配合させた点眼薬です。Santenとシンガポールの国立眼科・視覚研究所であるシンガポールアイリサーチインスティテュート(SERI)が共同開発した点眼剤で、アトロピン硫酸塩水和物を0.025%含有しています。
本剤は、主に小児を対象に投与することから安全性を考慮された、防腐剤を含まない一回使い切りタイプのミニ点製剤です。
これまでは近視抑制点眼薬として「マイオピン0.025%」を使用していましたが、「リジュセアミニ」が国内承認され、2025年4月より販売開始となったため、「マイオピン0.025%」は販売終了となりました。当院では在庫がなくなり次第、「リジュセアミニ」へ切り替えご案内しております。
特性
臨床試験においてプラセボ(薬効成分を含まない)群に対し有意差が認められました。
- 5~15歳の近視患者対象の調節麻痺下他覚的等価球面度数および眼軸長を指標とした第Ⅱ/Ⅲ相試験における近視進行抑制効果
- 36か月の長期的な近視進行抑制効果
副作用
主な副作用は羞明です。薬の作用で散瞳するため、まぶしさを感じたり、ぼやけて見えることがあります。重篤な副作用は認められませんでした。
治療の対象となる方
- 近視の方
- 5~15歳の方(近視の進行状況に応じて16歳以上でも適応となる場合があります)
- 定期的な通院が可能な方
治療の費用と流れ
初めに保険診療で近視の状態を確認します。「リジュセアミニ点眼」をご希望される場合は自由診療となるため、別日に初回診察として来院していただきます。
検査・診察 | 初回 | 3,000円(税込) |
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再診 | 2,500円(税込) |
リジュセアミニ点眼液0.025% (1箱30本入り:30日分) |
4,200円(税込) |
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1. 初回治療
検査・診察+点眼液 1箱処方 7,200円(税込)
2. 1か月後の再診
検査・診察+点眼液 3箱処方 15,100円(税込)
3. 以後、3か月毎に再診
検査・診察+点眼液 3箱処方 15,100円(税込)
眼鏡・コンタクトレンズ 処方が必要な場合 700円(税込)
注意事項
- 目薬は夜寝る前に1日1本、1回1摘をご使用ください。
- 防腐剤を含まない使い捨てタイプです。容器の先端を開封後は1回切りの使用とし、残液は保存せず必ず破棄してください。
- 未開封のものは遮光して保存してください。
- 2年以上は治療を継続されることを推奨します。
- 低濃度アトロピン点眼は自由診療のため、保険診療や子ども医療費助成制度は適応されませんが、治療費は医療控除の対象となります。
- 副作用などで治療を中止した場合でも、一旦処方した点眼薬については、原則、返品・返金に応じることはできません。
オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼の併用療法
多焦点ソフトコンタクトレンズと低濃度アトロピン点眼の併用療法
「オルソケラトロジー」と「低濃度アトロピン点眼」を併用、または「多焦点ソフトコンタクトレンズ」と「低濃度アトロピン点眼」を併用することで、より強力な近視抑制の効果が期待されます。
当院では併用治療にも対応していますので、ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。(※ 併用療法は全て自由診療です)